東京高等裁判所 昭和62年(行コ)33号 判決 1987年11月26日
静岡県静岡市神明町三八番地の一
控訴人
牧野忠篤
前同市二番町六一番地
控訴人
牧野宏記
前同所
控訴人
三好ちさ代
右三名訴訟代理人弁護士
富田和雄
右同県同市追手町一〇番八八号
被控訴人
静岡税務署長
服部文雄
右指定代理人
大沼洋一
同
和栗正栄
同
花木利明
同
前川晶
右当事者間の所得税更正処分等取消請求控訴事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件各控訴を棄却する。
控訴費用は、控訴人らの負担とする。
事実
一 控訴人ら訴訟代理人は、「1原判決を取消す。2被控訴人が昭和五七年七月一四日付でした、(一)控訴人牧野忠篤に対する同控訴人の昭和五四年分所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分のうち、納付すべき税額八五九万九七〇〇円及び過少申告加算税額六万二〇〇〇円を超える部分、(二)控訴人牧野宏記に対する同控訴人の昭和五四年分所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分のうち、納付すべき税額八五五万一四〇〇円及び過少申告加算税額七万五七〇〇円を超える部分、(三)控訴人三好ちさ代に対する同控訴人の昭和五四年分所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分のうち、納付すべき税額八三六万〇一〇〇円及び過少申告加算税額七万一九〇〇円を超える部分をいずれも取消す。3訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴指定代理人は、控訴棄却の判決を求めた。
二 当事者双方の主張及び証拠関係については、当審における証拠関係につき本件記録中の当審書証目録及び証人等目録の記載を引用するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
理由
当審も、控訴人らの本訴請求は、これを失当として棄却すべきものと判断するが、その理由については、左に付加、訂正するほか、原判決がその理由において説示するところと同一であるから、これを引用する。
1 原判決一一枚目表六、七行目「主張するが、」の次に「本件においては、本件土地の代金がいくらと決定され、現実にいくらの代金が支払われたかについて、売買契約書、領収書等これを証するに足りる証拠がないので、本件土地の売買時における価額は、鑑定による当時の適正価額によってこれを定めるほかはないものと解されるところ、」を加える。
2 同一一枚目裏一行目「認められ、」を「認められる。」と改め、次につづけて「もっとも、原審証人松浦卓朗の証言中には、本件土地の昭和四〇、四一年当時の適正価額は本件土地の将来の発展を見込んで四五〇〇万円位であったとの供述部分があるが、成立に争いのない乙第八号証の一の三及び当審における右証人の証言によると、松浦卓朗は前田歳椛から本件土地の買主の紹介を頼まれたが、売買交渉には一切関与せず、また本件土地の実状、将来の発展可能性等を具体的に調査するなどしてその適正価額を検討したこと及びその価額を前田歳椛や英に報告するなどしなかったことが認められることに照らし右供述部分は措信できず、また、原審証人出縄重男の証言及び原審における控訴人牧野忠篤本人尋問の結果中には、本件土地の価額は坪四〇万円が相当であるとの供述部分があるが、その供述内容自体によっても右金額は適確な根拠に基づくものではなく、推測的なものに過ぎないことに照らし右証言及び本人尋問の結果中の供述部分もこれを措信することはできず、」を加える。
3 同一二枚目表五行目「いえない。」を「いえないのみならず、原本の存在及び成立に争いのない乙第六号証の一、二によると、右根抵当権者である駿河銀行が債権極度額を七三五〇万円としたのは、当初は、従前から貸付けられていた継続的信用手形二〇〇〇万円を回収することを条件に五〇〇〇万円を融資する予定であったところ、他に存した二三五〇万円の貸付金をも被担保債権に加えた結果であり、本件土地とみられる宅地についての担保評価額を右債権極度額とほぼ同額としたのもこれを引きうつしたものに過ぎないものと推認され、到底本件土地の時価を適正に表示したものとは、認め難いところである。」と改める。
4 同一二枚目裏六行目「証人松浦卓朗」の前に「原審」を、同一四枚目表七行目「土地」の次に「から転居し、そのころ同土地」を、八行目「証人松浦卓朗」の前に「原審」を各加え、同行「原告」を「原審における控訴人」と改め、裏九行目「三二条」の次に「(昭和五五年法律第九号による改正前のもの)」を加える。
以上の次第で、控訴人らの本訴請求は、これを失当として棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であって、本件各控訴はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 中村修三 裁判官 山中紀行 裁判官 関野杜滋子)